第61章 噛んで血が出た

室内の灯りがじんわりと滲み、二人の輪郭をやわらかく照らしていた。

八幡誠言は視線を落としたまま、鳴海絃星との距離をゆっくり詰めていく。

逃れようのない甘い気配が、二人のあいだに広がった……。

身体をぴたりと寄せ、唇が触れる寸前まで迫った、そのとき。

鳴海絃星が突然、手のひらを彼の胸に押し当てた。

「八幡誠言。夜中に何してんの、発情でもした?」

「寂しくてたまんないなら若林詩羽のとこ行きなよ。ここで私を吐き気させないで」

腰に回された熱い大きな手から逃れようと、彼女は必死にもがく。

けれど、その腕は鉄の輪みたいにびくともしない。

鳴海絃星は息を深く吸い、脚を上げて彼の足の甲を...

ログインして続きを読む