第70章 彼には母がいる

菊池晃の母親は、まさかこんな結末になるとは思っていなかったのだろう。息子の頭をぱんっと叩き、

「早く八幡一辰くんに謝りなさい!」

菊池晃は顎を上げ、納得いかない顔で言い返す。

「雑種なんかに謝るわけないだろ! やだ!」

「黙りなさい!」

母親が鋭く叱りつけると、恐る恐る鳴海絃星と八幡誠言の様子をうかがった。

とくに八幡誠言だ。入ってから一言も発していないのに、全身から滲む殺気が、彼の我慢が限界だと告げている。

「謝りなさい!」

母親はもう一度、息子に命じた。

本気で怒っていると悟ったのか、菊池晃は八幡一辰に向かって、早口で吐き捨てるように言った。

「……ごめん」

八幡一...

ログインして続きを読む