第74章 千金を一擲する

会場は一瞬にして水を打ったように静まり返り、誰もが一斉に振り返った。

入口の光と影の境目に、八幡誠言が逆光を背負って立っている。近寄るなと告げるような冷気が、全身から滲み出ていた。

彼はそのまま会場へ足を踏み入れる。歩みはゆっくり。だが、空気を押し潰すような圧がついてくる。

驚愕に固まる視線の中、誠言はまっすぐ若林詩羽の隣へ向かい、何事もなかったかのように腰を下ろした。

若林詩羽は一瞬きょとんとしたが、次の瞬間、顔いっぱいに喜色を弾けさせる。

「誠言、どうして来たの?」

「……うん」

八幡誠言は小さく頷いただけで、それ以上は言わない。

その視線が人波を越え、鳴海絃星のところで...

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