第98章 八幡誠言が助けるわけない

四方八方から海水が押し寄せ、耳の奥へ、鼻へ、口へと容赦なく流れ込んでくる。

塩辛い水が喉を焼き、声なんてひとつも出せない。

鳴海絃星は泳ぎが得意じゃない。しかも今夜は風も波も荒い。必死に水を蹴り、なんとか水面へ顔を出そうとする。

けれど、ようやく浮き上がって半息ついた瞬間――頭頂に手が叩きつけられた。

ぐい、と。

容赦なく沈められる。

上では若林詩羽がばたばたと手足を動かしながら、「助けて!」と甲高く叫んでいた。叫ぶたびに、彼女の体重がさらに鳴海絃星へとのしかかる。まるで浮き木を踏みつけるみたいに。

押し込まれて、押し込まれて。

肺が破裂しそうだった。もがくたび、残り少ない酸...

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