第162章 彼女を頼む

篠崎グループ本社前。マイバッハから降り立った篠崎司は、高級スーツを完璧に着こなし、圧倒的な気品を漂わせていた。淡泊な瞳からは、何の感情も読み取ることはできない。

彼は背後に控える須田樹を一瞥した。

「明日、パリへ発つ。現地の責任者に連絡を入れ、俺の身の回りのものをすべて用意させておけ」

須田樹は頷きつつも、その決定を唐突だと感じていた。

「承知いたしました、篠崎社長。ですが、パリのプロジェクトは間もなく完全封鎖環境での実験段階に入ります。恐らく……」

一度入れば、当分は戻ってこられないはずだ。

「俺が自ら実験に参加する」

篠崎司はカフスを直しながら、表情一つ変えずに篠崎グループの社...

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