第217章 四百億円

 柳瀬が何か言いかけた、その瞬間だった。

 樹がさっと手を伸ばし、彼の口をがっちり塞ぐ。

 二人は互いに目を剥き合い、じっとにらみ合った。どちらの瞳にも、相手への不満がありありと浮かんでいる。

 樹としても、半ば泣きたい気分だった。

 ――うちの社長と桜井さんを仲直りさせるためじゃなかったら、こんな真似するかよ。

 部屋の中で待っていた昭子は、いつまでたっても誰も入ってこないものだから、何かあったのではと胸騒ぎを覚え、慌てて様子を見に行こうと立ち上がった。

 だが、その手首を司がすっとつかむ。

「昭子、樹が外にいる。何も起きないよ、安心しろ。適当に俺に紹介してくれればいい。そう...

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