第219章 膠漆の如し

司の振る舞いに、昭子はカッとなって彼を睨みつけると、ぷいと窓の外へ顔を背けた。

「昭子、悪かった」

司は伏し目がちに呟くと、愛おしげに彼女の唇を指でなぞろうとする。だが昭子はその手に触れさせまいと、身を縮めて避けた。

それでも司は手を伸ばして彼女の頬を包み込み、声を甘く落とした。

「昭子、こっちを見てくれ。そんな態度はとらないでくれ、頼む」

恋愛経験など皆無で、女心などさらさら解さない彼は、昭子の怒りを前にして、ただ下手に出て優しく機嫌をとるしか術を知らなかった。

昭子がむっとした表情で睨み返すと、司は続けた。

「昭子、俺を……戻してくれないか?」

その言葉に、昭子はきょとんと...

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