第232章 後遺症が残る

以前、司がサインを求めてきた時、彼女自身の名前を書かせたことを思い出す。まさかあの瞬間から、彼は本来の自分を取り戻させる計画を立てていたのだろうか。

「でも、涼さんとは約束しましたから。姉さんの名前でプロジェクトをやり遂げるって。それに、私の心臓は……」

昭子はどこか寂しげに瞳を伏せる。

司の厚意は痛いほど嬉しい。けれど、世間が認めているのは著名なデザイナーである『桜井杏』であり、自分ではないのだ。

ましてや、自分の名前で姉の仕事を全うすることなど、許されるのだろうか。

しかし司は首を横に振り、優しく諭すように言った。

「安心しろ。お前が姉の名前を使ってやり遂げても、何の問題もない...

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