第26章 桐山霖に再会

運転手はまるで救いの神にでも出会ったかのように、慌てて桜井昭子の腕を掴んだ。「ほら、お嬢さんも俺がぶつかってないって言ってくれてるじゃないか! だから早く立ってくれよ」

老婆は歯を食いしばり、腹を括ると、いきなり桜井昭子の鼻先を指差して罵倒した。「思い出したぞ、お前だ! この小娘が私を押したんだ! だから転んだんだよ!」

老婆の逆ギレを聞き、桜井昭子は無力感を覚えると同時に、ごろつきというものがどれほど厄介な存在かを思い知った。

彼女は辛抱強く説明する。「さっきは赤信号でした。あなたが信号無視をしようとしていたので、親切心から引き戻そうとしたんです。でも、私があなたに触れるより前...

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