第269章 自由になった

今の涼には、彼女に懇切丁寧に説明する気など毛頭なかった。ただ冷たく言い放つ。

「病気を治せ。そうすれば出て行っていい」

昭子をこれ以上傍に置いておけば、彼女が杏なのか、それとも昭子なのか、自分でも区別がつかなくなりそうだった。

その思いを振り払うように、涼は拳を握り締め、足早にその場を立ち去った。

リビングでは助手が彼を待ち受けており、声を潜めて報告する。

「桐山社長、篠崎さんの使いが参りました」

涼は鼻で笑うと、昭子のいる部屋を振り返った。

「加賀ミツを行かせろ。昭子の声色を使わせて、司に諦めさせるんだ。追い返せ」

昭子を手放すと決めたとはいえ、みすみす司の元へ返してやる義理...

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