第277章 見分けがつかない

昭子が部屋を出た後、胸のざわめきはどうしても収まらなかった。これまで司が彼女を置き去りにして会社へ向かうことなど、ほとんどなかったからだ。強烈な不安が昭子の全身を絡め取っていく。

居ても立っても居られず、彼女は階段を降りた。会社へ行って彼に会いたい。司のそばにいなければ、ひと時の安らぎさえ得られないのだ。

執事の佐藤が、急ぎ足で降りてくる彼女の姿に気づき、慌てて声をかけた。

「桜井様、どちらへ?」

昭子はすでにコートを羽織っていた。

「篠崎グループへ……彼のところへ行きたいの」

佐藤は彼女の前に立ちはだかり、諭すように言った。

「桜井様、ご心配には及びません。坊ちゃんは少し用事を...

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