第28章 因縁の対決

「そうですか?お名前は何と?」白川あかりは口元に手を当ててくすりと笑い、目尻をわずかに上げた。

「白川さん、ご存じないかと思いますが、桜井昭子といいます」

その名を聞いた途端、白川あかりの笑みはたちまちこわばり、目の奥に一瞬、険しい光が宿ったが、すぐにそれを隠した。

桐山霖はさりげなく背後を一瞥する。ちょうど江口美月が桜井昭子を連れて隅の方を慌ただしく通り過ぎていくのが見えた。なぜだか分からないが、遠ざかっていく桜井昭子の後ろ姿を見つめていると、胸にぽっかりと穴が空いたような心地がした。

白川瑞樹は二人が誰の話をしているのか分からなかったが、どこか不穏な雰囲気を感じ取り、思わず汗を拭う...

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