第286章 もしもはない

圭吾は、今の自分の姿をすでに受け入れているようだった。気にする風でもなく首を横に振る。

「医者にはもう治らないと言われたよ。大丈夫だから、気にしないでくれ」

 美月の目頭が、とたんに熱くなる。彼が何も間違ったことなどしていないのを、彼女は知っている。あれほど優秀だった人が、こんな結末を迎えるなんて……あまりにも哀れで胸が詰まる思いだった。

「いいんだ、美月さん。僕のために悲しまないで。今のこの状態に、僕はもう満足しているから」

 結局、本来慰められるべき圭吾が、美月を慰めることになってしまった。

 そんな彼の言葉に、美月の胸のつかえは重くなるばかりだ。こんな彼の姿を絶対に昭子には見せら...

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