第290章 結納品

そう言い残して、樹は期待に満ちた眼差しで司を見つめた。

しかし、司はただ一言、短く吐き捨てた。

「励め」

それを聞いた樹はその場で凍りつき、信じられないといった表情を浮かべた。彼は聞き間違えたのだろうか。以前、ユキが金に困っていると言った時、篠崎社長は躊躇なく数十億の小切手を切って渡した記憶がある。

なぜ自分の時はこうも扱いが違うのか?

樹が自問自答している間に、司は彼の目の前まで歩み寄り、冷ややかな声で命じた。

「結納の品を買い揃えてこい。送り先は江口さんの家だ」

昭子には身寄りがなく、傍にいるのは美月ただ一人だ。

長い付き合いの中で、昭子はすでに美月を家族同然に思っている。...

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