第292章 篠崎家全体

実のところ、昭子と司の現状を鑑みれば、彼がわざわざ彼女の意向を伺う必要など皆無だった。強引に盛大な結婚式を挙げ、婚姻届を出させてしまえばそれで済む話だ。だが彼は、あえて正式な手順を踏み、彼女の家へ出向いて結婚を申し込むことを選んだ――それは昭子の顔を立てると同時に、彼自身のプライドを守る行為でもあった。

その一点だけでも、美月は司に昭子の生涯を託す価値があると感じていた。

美月は頷くと、明るい笑みを浮かべた。

「あら、そんな他人行儀なこと言わないで。こういう話はやっぱり皆で相談しないとね。佐藤さん、お茶を淹れてきてちょうだい」

一同が席に着くと、樹と司の間で無言の目配せが交わされた。樹は...

ログインして続きを読む