第294章 篠崎の大奥様が来訪

しばらくの間、他愛のない話を続けたが、蘭の話題になると互いに表情を曇らせた。昭子はこのところ蘭の姿を見ていない。そこで美月と相談し、明日は病院へ見舞いに行くことに決めた。

翌朝。

昭子が目を覚まし、洗面所へ向かおうとしたその時、家政婦の佐藤さんが恭しく声をかけた。

「桜井さん、篠崎の大奥様がお見えです」

隣で寝ていた美月は、寝ぼけた頭で「篠崎」という響きだけを拾ったらしい。朝っぱらから司が押しかけてきたのだと勘違いし、思わず悪態をつく。

「あいつも気が早いわね。昭子が逃げるとでも思ってるんじゃない?」

ぶつぶつと文句を言い、枕を抱きしめて再び夢の中へ落ちていく美月。だが、昭子にははっきり...

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