第299章 愛される味

三人は示し合わせたかのように、この間の出来事には触れようとしなかった。互いが何を経てきたのかは痛いほど分かっている。だからこそ、あえて傷口を広げるような真似はしたくなかったのだ。

北斗が淹れたての紅茶とケーキを運んでくると、昭子はその背中を見送りながら、たまらず声をかけた。

「蘭ちゃん、彼とはどういう関係なの?」

蘭は紅茶を一口すすると、北斗の後ろ姿に視線を向け、口元を綻ばせた。

「私、彼の婚約者になったの」

「えっ?」

昭子と美月の声が重なり裏返る。二人は信じられないといった表情で蘭を凝視した。

「いつの間にそんなことになったのよ? なんで教えてくれなかったの」

美月は蘭に食...

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