第35章 誰も愛さない

篠崎司がしていることは全て、彼女を辱めるためだけに過ぎず、他に意味などない。

それなのに彼は桜井昭子の首筋に顔を埋め、明らかにどうしようもないといった声色で言った。「俺がお前に与えるものでは足りないのか? いくらやれば、あいつから離れるんだ?」

桜井昭子の頭の中が、一瞬で真っ白になった。篠崎司は一体何をしているの? 彼女は手を固く握りしめ、彼の目元を見上げた。

「わ、私を……汚いと思わないのですか?」

その言葉を発した途端、篠崎司の体がこわばり、彼女との距離が少し遠のいたのがはっきりと分かった。

「なら、どうしてあんなことをした」篠崎司は低く呟いた。

桜井昭子は途方に暮れた。篠崎司...

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