第350章 あなたも彼女が好き

空を舞う雪片に森山七海が気づいたのは、その時だった。雪の中に佇む兄の姿に、彼女はある種の退廃的な美学を見出していた。

思わず感嘆の息を漏らすと、彼女は慌てて傘を取り出し、護衛に持たせた。

「頭が真っ白になっちゃう前に渡してあげて」

恋に惑い、雪に白髪を装う。神様もなかなか粋な演出をするものだ。

森山タクは長いこと待たされた挙句、相手に開ける気配がないのを見て苛立ちを募らせ、執拗にチャイムを連打した。

室内の男は眉を顰めた。終わりのないベルの音に神経を逆撫でされながらも、彼は女の唇に口づけを落とし、優しく囁く。

「昭子、ここで少し休んでいろ。俺が片付けてくる」

桜井昭子は愛撫に力を...

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