第360章 揉め事

桜井昭子は男の不機嫌な表情を覗き込み、小声で尋ねた。「もしかして、妬いてるんですか?」

それを聞くと、篠崎司は鼻で笑い、顔を背ける。「俺が嫉妬など、するわけがないだろう」

先ほど桜井昭子に無視された時、心が死ぬほど辛かったことなど、口が裂けても彼女には言えない。

桜井昭子は伏し目がちに、ずっと自分を掴んでいるその手を見つめた。口元が自然と綻び、喜びの色が滲む。

この男は明らかに妬いているのに、頑なに認めようとしないのだ。

「はいはい。それで、結婚式はどこでするんですか?」桜井昭子は男の腕に手を絡ませ、穏やかに微笑んだ。

女の笑顔を前にして、篠崎司の先ほどまでの不安な心は、一気に落ち...

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