第371章 彼女のために生きる

桜井昭子はすでに結婚した身だ。初恋の相手からこれほど高価なものを受け取るなど、どう考えても世間体が悪すぎる。

「安心してください。これはすべて彼女に残す遺産です。僕が逝ってから、はじめて公表されるものですから」

『遺産』――その二文字が、江口美月の脳裏を激しく揺さぶった。彼女は信じられないという目で遠山圭吾を凝視する。

「圭吾、馬鹿な真似は絶対にしないで。昭子が知ったら、どれだけ悲しむと思っているの。あなたがすべきことは、ちゃんと生きることよ」

遠山圭吾は疲労を滲ませて首を振った。その声は冷ややかだ。

「美月さん、僕は病気なんです。治療は受けていますが、あとどれくらい生きられるか……自...

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