第395章 篠崎の焼き餅

望月延は鞄からペットボトルの水を二本取り出し、江口美月に手渡した。

「最初から準備しておきましたから」

「ありがとう」

江口美月が頷くのを見て、遠山圭吾も思わず口元を緩めた。望月延の江口美月に対する細やかな気遣いは、今のところ悪くない印象だ。

「結びましょうか」

そう言って望月延はゴムを取り出し、彼女の髪を束ねようとする。だが、その手つきはどこかぎこちない。

「手術のときとは勝手が違いますね……」

と、つい口ごもる。

その言葉に、江口美月は思わず吹き出した。

「やっぱり自分でやるわ」

その二人の姿を眺めながら、遠山圭吾の脳裏には、記憶の中の少女の姿が蘇っていた。あの頃、彼女はいつも髪を...

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