第45章 心機が深すぎる

人だかりの中でも古川清葉は特にぎょっとし、心臓が狂ったように跳ねた。

自分は桜井昭子を軽く平手打ちしただけなのに、どうして急にこんなことに?

古川清葉は歯を食いしばる。この女はきっと演技をしているのだ、桐山霖の前で気を引こうとしているに違いないと。篠崎修斉も例外ではなく、その眼底からは嘲りが溢れんばかりだった。

誰一人として、篠崎司がゆっくりと拳を握り締めていたことには気づかなかった。彼は桐山霖の背中を睨みつけ、ひどく掠れた声で言った。「桐山社長、お忘れなく。貴方と私の妹には、先に婚約があったはずだ」

桐山霖は彼を振り返り、浅く微笑んだ。「彼女とは結婚しません。この婚約は私が決めたもの...

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