第52章 私たちはずっと前から知り合いだった

桐山霖が料理を取っていると、篠崎司が傍らに歩み寄り、皮肉めいた口調で口を開いた。

「桐山社長も随分と優雅なものだな。こんな場にまで恋人を連れてくるとは」

桐山霖は相手から伝わってくる悪意をはっきりと感じ、わずかに眉をひそめる。「恋人? 私にはいない」

その言葉を聞き、篠崎司は鼻で笑い、遠くに立つ桜井昭子を意味ありげに一瞥した。

「お二人の関係は、そう単純なものには見えないがな」

桐山霖は彼の棘のある物言いが気に食わず、自ら説明する。「篠崎社長の誤解ですよ。私と桜井さんはそういう関係ではありません」

「違うと?」篠崎司は眉を上げ、冷ややかに鼻を鳴らす。「さて、どうかな」

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