第55章 彼らは婚約する

須田鶴雄はそれを聞くと、桐山霖が誰のことを尋ねているのか瞬時に理解した。

単なる心臓病であればこのような問題は起こらないだろうが、桜井昭子の場合は心不全であり、呼びかけても起きないのはごく正常な現象だった。

彼はその状況を桐山霖に伝えようと思ったが、桜井昭子のあの時の表情を思い出し、隠しておくことを選んだ。

「心配いりません。彼女はもともと心臓に持病があり、無理は禁物です。最近疲れが溜まっていたのでしょう、だからそんな症状が出たのかもしれません」

それを聞いて、桐山霖はようやく安堵のため息をついた。このところ彼女にあれこれと頼みごとばかりしていたこと、それに以前の怪我もまだ治っていない...

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