第57章 結婚を申し込む

「車の準備ができた。行こう」

「はい」桜井昭子は頷き、どうやってベッドから降りようかと思案していた。

桐山霖は彼女の考えをすぐに見抜き、まっすぐ歩み寄ると、彼女の体を横抱きにした。

不意に体が宙に浮き、桜井昭子は無意識に桐山霖の首に腕を回す。すると、彼の低い声が聞こえてきた。「俺が抱いて降りるよ。君じゃ降りるのが大変そうだ」

桜井昭子は目を伏せ、何も言わなかった。それは暗黙の同意だった。

桐山霖は口元に笑みを浮かべ、腕の中の人の華奢さを感じ、思わず声をかける。

「もっと食べなよ。君は痩せすぎだ」

「……はい」桜井昭子は頷き、目を伏せたまま黙り込んだ。

もっと食べて、太って、少しでも長...

ログインして続きを読む