第58章 いずれ思い出す

「足は大丈夫か?」桐山霖の視線が彼女の両脚に注がれる。

先ほどの桜井昭子の様子では、身動きするのも困難そうだったが、心臓病にこのような症状があるのだろうか?

「本当に大丈夫、持病だから」桜井昭子は適当な理由をつけて誤魔化し、気を持ち直した。

桐山霖からあのような話を聞かされても、彼女はまだ完全に信じることはできなかった。

五年前、彼女ははっきりと見たのだ。あの顔は桐山霖と瓜二つだった。まさかこの世に、二人目の桐山霖がいるとでもいうのだろうか?

桐山霖は唇を引き結び、それ以上は訊かなかった。

病人は、他人に病状を尋ねられるのをひどく嫌うと聞く。

今日、部屋で彼が余計な一言を訊ねただ...

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