第70章 五年前の真実

「どうでもいい……」

男は体を覆いかぶせてきて、手元の動きも止めなかった。

桜井昭子も、今回の篠崎司は本気で怒っているのだと気づいた。彼の潔癖症さえも顧みないほどに。

篠崎司は彼女に触れた瞬間、心の奥底に長らく隠されていた感情が再び爆発した。彼の瞳の奥にある狂気じみた執着と独占欲は、桜井昭子に見慣れないものだった。

彼女はこんな篠崎司を見たことがなかった。彼のやや乱暴な振る舞いから、彼女への懐かしささえ感じ取ってしまうほどだ。

彼女には理解できず、目の前で狂ったように自分にキスをする男を困惑した面持ちで見つめた。

自分は篠崎司の心の中で、いったい何なのだろう? ただの生理的欲求の対...

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