第73章 もう絡まないでください

何よりも、もうすぐ死ぬのだ。心不全のせいで頬はこけ、自分でも耐えられないほど醜い姿になっていた。

篠崎司にこんな自分を見られたくなかった。

自分が死んでしまえば、少なくとも篠崎司の心の中の自分は、綺麗なままでいられる。

桐山霖は苦い笑みを浮かべ、絶望に目を閉じた。

もし愛していないのなら、白川あかりが戻ってきてからどうして彼に触れるだろうか。それも彼の目の前で。

同じ男として、篠崎司の意図は自ずと理解できた。あれは彼への示威行為だったのだ。

彼女がそう感じてしまうのは、おそらく篠崎司が一度も口にしなかったせいで、彼女が気づかなかったからだろう。あの男が彼女に向ける眼差しの奥に潜む、...

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