第74章 彼女のためにドナーを探す

「古川蘭、篠崎社長がお呼びだ」

須田樹が二階から顔を出した。

古川蘭は頷き、須田樹に促されるまま、篠崎司の寝室のドアを押して開けた。

「篠崎社長、私に何かご用でしょうか?」

篠崎司は寝室の掃き出し窓の前に座っていた。しとしとと降る雨粒がガラスを打ち、屋外の景色はすべてがぼんやりと霞んでいる。そんな篠崎司の姿に、古川蘭はどこか寂しげなものを感じ取った。

もしかして、桜井さんが去ったからだろうか?

「イギリスのハワード医師に連絡はしておいた。彼女の心臓に適合するドナーを探してもらう。連絡先は須田樹から送らせるから、あとは君が彼と連絡を取り合え」

古川蘭はわずかに息を呑んだ。ハ...

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