第103章

荒い息づかいだけが聞こえた。続いて、聞き覚えのない男の罵声。

『おい、もう確保したぞ。金はいつ振り込むんだ?』

――知優の声じゃない。

鈴崎潤は眉をひそめ、胸の奥で警報が鳴り響く。何も言わず、スマホを耳に押し当てたまま息を殺した。

車内では、宝生知優が男の通話に乗じて素早く位置情報を送信し、そのまま端末を座席の隙間へねじ込む。

もう少し身を寄せて会話を拾おうとした、その瞬間。

ギシィッ――!

車体が大きく軋み、思った以上の音が響いた。

前の席の男がぴくりと反応する。

『このクソ女、動いたら殺すぞ!』

怒鳴りながら振り返り、通話を乱暴に切った。

エンジンが唸り、車は跳ねる...

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