第104章

 その場にいた男は、状況を見た瞬間にさっきまでの凶暴さが嘘みたいに消えた。膝が抜けたようにへたり込み、震える声で命乞いをする。

『お、お願いだ……見逃してくれ……!』

「その台詞は警察に言え」

 鈴崎潤は冷えた声で言い捨てると、相手の肩を逆手に押さえ込み、床へねじ伏せた。

 ほぼ同時に、外から警官たちがドアを破ってなだれ込み、現場は一気に制圧される。

 宝生知優は握りしめていた木の棒から、ふっと力が抜けた。視線は自然と、鈴崎潤の腕へ吸い寄せられる。

 濃い色の服地が、血でじわりと濡れている。薄暗い光の中でも、暗赤色がやけに生々しく目に刺さった。

「……潤くん、怪我してる」

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