第107章

宝生知優は頭が真っ白になり、ひと言も出てこなかった。

鈴崎潤はそのまま手を伸ばし、ひんやりした湯の中へ差し入れると、確かな手つきで彼女の身体をすくい上げる。

ぱしゃ、と水が軽く跳ねた。

大きなバスタオルで包み込み、慌てるでもなく落ち着いた動き。

濡れた髪の先から、肩、うなじ、丸みのある背中へ――指先で距離を測るみたいに、丁寧に水滴を拭っていく。

鈴崎潤の表情はあまりにも自然で、まるで日常の延長みたいだった。

だからこそ、彼女が抱えていた不安のほうが、滑稽に思えてしまう。

身体を拭き終えると、彼はもう一枚の乾いたタオルで彼女をすっぽり包み直し、身をかがめて、軽く力を入れる。

そ...

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