第112章

鈴崎潤が自分を愛してくれるだなんて――そんな妄想までしていたなんて。

心臓が、ひゅっと一拍止まった気がした。

その瞬間、宝生知優はすとんと腑に落ちてしまった。

鈴崎潤にも、ほんの一瞬くらいは心が揺れたことがあったのかもしれない。

だからこそ、彼が自分を好きになったのだと、都合のいい錯覚を抱いてしまったのだ。

彼の気持ちを傷つけないように、ちゃんと説明しようとまで思っていた自分が滑稽だった。

双葉知世が、何度も何度も、目の前で挑発してきた場面が脳内でフラッシュバックする。

――宝生知優の心は、完全に死んだ。

忘れられない人は、やっぱり忘れられない。

誰にも、男の心の中のその場...

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