第114章

そこには、ひとりで座っている男がいるようだった。

光と影がその横顔の輪郭を交互になぞり、端正さをいっそう際立たせている。纏う空気は格別で、どこか鈴崎潤と肩を並べてもおかしくない――そんな気配すらあった。

気のせいだろうか。彼の視線が、こちらへ一瞬だけ投げられた気がした。

宝生知優は慌てて目を逸らし、野原リリに小声で白状する。

『やばい。ちゃんと見たら……やっぱ鈴崎潤のほうがカッコいいかも』

野原リリがぷっと吹き、予想通りとばかりに肩を揺らした。

『だよね。そもそも土俵が違うし。鈴崎潤がそんな簡単に負けるなら、知優も「子ども産んであげてもいい」とか言わないでしょ』

言いながら、リ...

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