第120章

宝生知優が寝室のドアを押し開け、階下へ降りようとした、そのときだった。

廊下で不意打ちのように、隣室で寝ているはずの鈴崎潤と鉢合わせる。

彼女の視線がわずかに揺れ、ぶつかりそうになった目線を咄嗟に逸らした。

鈴崎潤はきちんと身支度を整え、数歩先に立っている。

彼は彼女の目の下の薄い隈へ、淡々と一瞥を投げ――何事もなかったように視線を外した。

二人は言葉もなく、前後して階段を下りる。

リビングに降りた瞬間、宝生知優の腹が情けなく「ぐぅ」と鳴った。

「おばさーん」と何度呼んでも返事がない。

「おばさん、休みだ」

背後から、鈴崎潤の冷えた声が落ちてくる。

「そっか。じゃあ、私が...

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