第132章

宝生知優は眉をひそめ、反射的に半歩ほど後ろへ下がった。少しでも距離を取る。

――ところが。

ピンクのスポーツカーは狙ったみたいに、ぴたりと彼女の目の前で止まった。

キィィッ、と耳を裂くブレーキ音。

次の瞬間、跳ね上がるようにドアが開き、全身ブランドで固めた男が降りてくる。サングラス越しの視線が、獲物を見つけたみたいに光った。

宝生知優だとわかった途端、男は口角をつり上げ、上から下までねっとりと値踏みする。

宝生知優も、その顔をはっきり認めた。

林原裕樹。

――つくづく、縁の悪い相手だ。

仇に会えば、目が合うだけで腹が立つ。彼女は好意の欠片すら見せる気になれず、踵を返して迂回...

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