第15章

鈴崎潤の名が出た瞬間、鈴崎母の顔にはふっと柔らかな色が差し、瞳の奥にいつの間にか水気が溜まっていた。

「知世……?」

宝生知優の記憶が正しければ、それは――彼の『高嶺の花』である双葉知世の名だ。

……なるほど。

自分は、双葉知世が鈴崎潤の心を占める重さを、見誤っていたらしい。

病がここまで進んだのも、双葉知世の存在が無関係ではない。

むしろ、少なからず影響しているのだろう。

「今でもわからないの。知世ちゃんが、どうして潤から離れていったのか。あの子がいなければ、潤だって……いえ、もし――」

鈴崎母は言いかけて口をつぐみ、呼吸を整えるように視線を落とした。

「……昔の話は、も...

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