第25章

街の灯がともり始めた頃、黒のベントレーは車の流れに紛れ、ゆっくりと進んでいた。

ハンドルを握る秘書は、思わずバックミラーへ視線をやる。

後部座席の男は、ただ伏し目がちに黙っていた。

黄みを帯びた街灯が、その端正で彫りの深い顔立ちをぼんやり照らす。

すると不意に、言いようのない寂しさがそこに滲んだ。

夜風には冷たさが混じっていた。

わずかに開いた窓の隙間から、ときおりひやりとした風が忍び込み、彼の額にかかる前髪をさらりと揺らす。

「夜風は冷えます。長く当たっていて、お身体に障りませんか」

声をかけられると、後部座席の男は烏の羽のような長い睫毛をかすかに震わせた。

指の節を唇に...

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