第38章

「――やってみる? 私に手を上げる度胸、あるの?」

林原裕樹が手を持ち上げ、殴る素振りを見せた。

宝生知優は、殴られる未来を悟っているはずなのに――怖がるどころか、静けさが不気味なほどだった。

「林原裕樹。あんたが私を殴ったら、鈴崎潤にあんたを潰させる」

その言葉は棘みたいに、林原裕樹の喉へ突き刺さった。

一瞬の逡巡ののち、振り上げられた大きな手が、ゆっくりと下ろされる。

宝生知優なら相手にできる。だが鈴崎潤は――手を出せる器じゃない。

――腰抜け。

宝生ミクルは胸の内で毒づき、上げては下ろすその手を見て、完全に怯んだのだと悟った。

宝生ミクルは百も承知で不満だったが、それ...

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