第68章

夜のバーは、艶めいた照明と耳を裂くような音楽に満ちていた。

東山嵐は、目の前でグラスを重ねては酒を流し込む女を見つめ、眉間に深い皺を刻む。

『もうやめろよ、お嬢様』

諦め混じりの声で制し、手を伸ばした。

指先がグラスの縁に触れた、その瞬間――宝生知優はひらりと身を引く。

彼女はただ、杯の中の液体を見つめていた。灯りを受けた酒がひやりと光り、今の心の冷たさをそのまま映しているみたいで。

『うるさい。もうちょい付き合って』

酔いが回って瞳はとろんとしているのに、言い終えるや否や、くいっと喉を鳴らして一気に飲み干す。

唇の端に水の筋が残り、知優は無意識にステムを指でなぞった。

『...

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