第69章

空気が凍りついたみたいだった。視線がぶつかった、その一瞬で、張り詰めた糸が今にも切れそうになる。

宝生知優は部屋の隅に身を縮め、肩紐がずり落ちたまま、胸が大きく上下していた。

怯えた小鳥みたいに、肌の一片一片が拒絶を叫んでいる。

情欲が引いた女は、残酷なほど冷たい。

「宝生知優」

鈴崎潤の声は、歯の隙間から絞り出したみたいに低かった。

眉間をきつく寄せ、胸の奥で、言葉にならない怒りが渦を巻く。

だって、言ったのは彼女のほうだ。

――自分を欲しい、と。

「どういうつもりだ」

短く吐き捨てる。ひとつひとつの言葉に、氷の欠片が混じっていた。

「欲しくないのか」

宝生知優は、...

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