第75章

車内の空調はちょうどいい温度で、宝生知優はほのかな酔いと倦怠に引きずられるように、深く眠りへ落ちていった。

かすかに覚えているのは、しっかりした腕が彼女をそっと抱き上げた感触。

柔らかなベッドに降ろされた瞬間、無意識に枕へ頬をすり寄せた。

次に目を開けたときには、もう朝だった。

薄いカーテン越しの朝日が差し込み、鈴崎潤がベッドの縁に腰かけ、背を向けたまま電話をしている。

途切れ途切れの声が、知優の耳に流れ込んできた。

『お爺さん……はい……今から彼女も連れて伺います』

寝返りを打った気配に気づいたのだろう。鈴崎潤が振り返り、ちょうど彼女の眠たげな目と視線がぶつかった。

宝生知...

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