第76章

「お年寄りって心が優しいでしょう。道端の猫や犬を見ても胸が痛むくらい。そんなことで、私が気にするわけないじゃない」

宝生知優は口元をふっと持ち上げ、慌てる様子もなくスカートの皺を指先でなぞって整えた。その雲を払うような落ち着きに、双葉知世は言葉を失う。

――まさか、ここまで平然としているなんて。

「本当に気にしてないの。それとも、気にしてないふり?」

双葉知世は眉をつり上げる。切れ長の目尻まで綺麗に吊り、挑発を隠さない声を投げた。

「猫や犬とは張り合わないの」

知優は視線を受け止める。瞳の奥に薄氷が張ったように冷たく、温度がない。

「……あなたとも、張り合わないのと同じ」

「...

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