第77章

宝生知優はケチな女じゃないし、わざわざ鈴崎母を不快にさせる必要もない。

ただ、胸の奥に引っかかるものがあった。スマホを確認するふりで視線を落とし、双葉知世が口にした教授の名前を、手下に素早く送る。

『この人物、調べて』

――その教授が本物かどうか。自分の目で確かめてやる。

食卓では、祖父が上座に座り、宝生知優は自然に鈴崎潤の隣へ腰を下ろした。

その瞬間を狙っていたかのように、双葉知世が素早く反対側の席を確保する。

左右から女に挟まれる形になり、空気がふっと湿る。

祖父は老獪だ。渦巻くものを一目で見抜きながら、何も言わない。

鈴崎母は息子の病状が気がかりで、双葉知世にやけに優し...

ログインして続きを読む