第9章
鈴崎母は満面の笑みを貼りつけたまま、鈴崎潤へ視線で合図を送った。――ほら、早く。
宝生知優はそれを見て、思わず笑いそうになる。
何度も目で促され、ようやく鈴崎潤が箸を伸ばした。ところが彼が彼女の茶碗に落としたのは、でかすぎる海老の頭。
「もっと食え」
鈴崎母が眉を上げる。
「潤くん、それは……?」
知優はにこりと笑って、さらりと言ってのけた。
「潤くんは目が悪いんです。私の好きなものは、自分で取りますから」
鈴崎潤が、ふっと鼻で笑った。
その小さな嗤いが耳に入った瞬間、知優の腹の底がむっと熱くなる。彼の太腿を、靴先で軽く蹴った。
潤の視線がすっと彼女の顔へ落ちる。
知優...
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