第4章
絵里視点
三十分が、三十時間にも感じられた。やがて田中先生がクリップボードを手に部屋に入ってきたとき、その表情が、先生が口を開くよりも先にすべてを物語っていた。
先生の後ろでは、先ほどと同じ看護師がドアのそばで神経質そうに佇んでいる。
「水原さん」先生は静かにそう言うと、私のベッド脇の椅子に腰掛けた。「最新の超音波検査の結果をお見せしなければなりません」
渡された報告書は、知らない言語で書かれた呪文のようだった。無数の医学用語が並ぶ中、ただ一つ、ナイフのように私の目に突き刺さった言葉があった。
『胎児心拍停止』
ロンパースが手から滑り落ち、床に落ちた。
「まことに、残念...
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チャプター
1. 第1章
2. 第2章
3. 第3章
4. 第4章

5. 第5章

6. 第6章

7. 第7章

8. 第8章

9. 第9章


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