第7章

絵里視点

この地獄に閉じ込められて五日目。

石の天井と腐りかけた床板の向こう、頭上から、葵の吐き気のするような甘ったるい声が聞こえてくる。「和也、ハニー、絵里は最近どうしてるの? まだどこかの病院で被害者ごっこでもしてるのかしら?」

「ああ、絵里か。捨てたよ」和也の声が降ってきた。まるで使い古した家具でも処分したかのような響きだった。「二千万くれてやった。俺がお前を選ばなかった腹いせに、ヨーロッパで『自分探し』の真似事でもするそうだ」

(嘘つきのクソ野郎)

「よかったわ」葵がクスクス笑う。髪を指でいじっている姿が目に浮かぶようだ。「あの子犬みたいな真似にはもうウンザリしてたの。...

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