第210章 IFストーリー

家の玄関を出たところで、かすかに海子の泣き声が耳に届いた。ひどくすすり上げているのが分かったが、それでももう、私の足を止めることはできなかった。

団地の階段を降りて外に出ると、思わず空を仰ぐ。雲ひとつない青空。胸いっぱいに新鮮な空気を吸い込むと、まるで長年牢屋に閉じ込められていた囚人みたいだ、とふと頭に浮かぶ。こんなにも自由を渇望したことが、今まであっただろうか。

団地の敷地内をとぼとぼと歩く。歩みはわざとゆっくりだ。数歩進んでは振り返り、海子がこっそり後をつけてきてはいないか、ちらちらと確認してしまう。

事前にめぼしをつけておいた法律事務所に入り、離婚の手続きについて一通り相談した。...

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