第213章 IFストーリー

 部屋のドアが閉まった音が、過去とのつながりまでぱたんと断ち切ってしまったように感じた。今までの思い出も、暮らしてきた日々も、そのすべてが一気に遠ざかっていく。どうやって階段を降りたのか、自分でもよく覚えていない。気がつけば、片手でキャリーケースの取っ手を握り、もう片方の手でリュックを背負った浩太の手を引き、マンションのエントランスに立っていた。

 振り返る。そこにあるのは、私の家……いや、もう違う。あそこは佐藤海子の家だ。部屋の明かりはまだこうこうと灯っている。しばらく見上げたあと、私は静かに背を向けた。そのまま二度と、振り返らなかった。

 タクシーに乗って駅へ向かう途中も、胸のざわつ...

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